一人暮らしだから出来た事

初めて講義を欠席した翌日から、彼は大学へ通うことを怠けるようになった。肉親への、憎悪にさえ似た不満、友人を作れぬ自身への失望。いろいろな鬱憤を晴らすために、「半年だけ」と期間を決め、勉学を勝手に休止した。丁度、前期の講義がひと段落し、長い夏季休暇に入ろうとしていた頃。区切りをつけるには良いタイミングだろう。諦めるのではなく、少しの気分転換。そうやって言い訳をする。一人暮らしで話し相手もいない、監視する者も諌める者もいない。

一人暮らしの素性を明かしてない

それがいけなかった。誰にも言わず勝手気ままに始めた「半年間の休み」は、終わりが近付くにつれもう少し、あとちょっとというように、ずるずると延長していく。そんな風であったが、生活費のためという現実的な問題のため、アルバイトは継続中。その職場の人間でさえ誰も、彼の愚かな状態に気付いていなかったようだ。当たり前だろう。一人暮らしの学生であること以外、殆ど自分についての事柄を明かさなかったのだ。休憩中であろうと、孤独を好んでいる。

一人暮らしの怠惰にハマる

勝手に行動を始めて、そろそろ1年が過ぎようとしていた。自分が既に大学の講義について行けなくなっていると気づく。1学年のうちに大概の基礎を修学するシステムであるから、当然といえば当然であろう。しかし、まだ2学年の前期、追いかけて間に合わぬ距離ではなかった。にもかかわらず、彼はすぐに諦めてしまう。一人暮らしの怠惰が、体中に染み付いてしまって、ちょっとやそっとでは抜けきらぬ程に、どっぷりと浸かってしまっていたのである。

自分から何もしなかったから、一人暮らしでドン底まで落ちるのを経験。でも最下層まで行けば、そこで留まるか上にあがるしかない。浮上のきっかけは、それとなくやってくる。

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