一人暮らしをやめて彷徨う

朝早くから夜遅くまで、街中をうろつくようになった。ファーストフード店、コンビニエンスストア、書店、図書館、デパート、大きな駅、ネットカフェ。一人暮らしの虚無感を埋めるかのように、或いは満たそうとでもいうかのように、とにかく人の多く行き交う場所を選んで、さまよい続けた。時には、地下街のベンチに座っていたこともあったらしい。よく変に勘繰られなかったものだと言ったら、一応身づくろいだけは整えていたからなと返される。

一人暮らしはもう少し続く

三年を修了すると同時に、大学もアルバイトも辞めた。ちゃんと行ってなかったことが、故郷にいる両親の知るところとなったのだった。「親戚の手前があるから、あと1年はそちらで働いて過ごせ。多少の仕送りはしてやる。お前はなんという親不孝な奴だろう、無駄に学費を払わせ続けるなんて。いいか、絶対帰ってくるな。」そう言われて、結局残りの時間を、その地で一人暮らししていたという。被害妄想癖や徘徊癖もそのうちぱったりとやんだらしい。

一人暮らしももう怖くない

「学校を辞めてからの一人暮らしは普通だった。すぐにある会社で正社員として雇ってもらえたから、フルタイムで働いていたし。年上ばっかりの職場だったから、結構かわいがられていたよ。休みの日でも、『若いのが1人で生活していれば苦しいだろう。』とか言って、よく飯を食わせて貰っていたなぁ。気づいたら、他人と話すのも平気になってた。」今の彼は気さくで陽気な、初対面の相手ともさっと打ち解けてしまうように、変貌している。

自分から何もしなかったから、一人暮らしでドン底まで落ちるのを経験。でも最下層まで行けば、そこで留まるか上にあがるしかない。浮上のきっかけは、それとなくやってくる。

Copyright 一人暮らしでドン底まで落ちる 2017
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